契約より先に交わした握手:Black Samurai Coffeeと神戸・西村珈琲のパートナーシップの物語

一度の握手から始まった関係――忍耐、透明性、信頼によって築かれたパートナーシップ

ビジネス上の関係は、見積書や発注書、あるいは契約書への署名から始まることがあります。

しかし、私たちと神戸西村珈琲との関係は、少し違った形で始まりました。

それは、約1年にわたり西村珈琲のさまざまな店舗を訪れ、問い合わせを重ねながら、Black Samurai Coffeeを適切な方にご紹介する機会を、焦らず粘り強く探し続けることから始まりました。

そして、その機会が訪れたのが、2021年10月5日でした。この日、カミール・オルビッソは初めて吉谷様と直接お会いしました。

この面談が、すぐに商業的な契約につながったわけではありません。
しかし、そこで生まれたものは、それ以上に大切なものでした。それは、お互いを理解し合うための第一歩です。

私たちはコーヒーについて話すだけでなく、それぞれが大切にしている理念についても語り合いました。品質、生産者との関係、そしてコーヒー業界において、それぞれの組織がどのような役割を果たしていきたいのかについて、意見を交わしました。

面談の最後には、西村珈琲の三宮店の前で握手を交わし、記念写真を撮りました。

それはごくシンプルな出来事でした。しかし、その握手は、その後に続いていくすべての関係の土台となる瞬間を象徴するものとなりました。

2021年10月5日の初対面後、西村珈琲の三宮店前で撮影したカミール・オルビッソと吉谷様。

最初の面談は、結論ではなく新たな出発点だった

最初の面談にたどり着くまでには、粘り強い取り組みが必要でした。

約1年間にわたり、カミールはさまざまな西村珈琲の店舗を訪れ、Black Samurai Coffeeとその理念をご紹介するための適切な機会を探し続けました。

しかし、その取り組みは、単に短期的な販売機会を得ることだけを目的としたものではありませんでした。

西村珈琲は、品質、ホスピタリティ、職人の技、そしてお客様との深い関係を大切にしながら、長年にわたり神戸のコーヒー文化を支えてきた会社です。

アフリカのコーヒー生産地と日本をつなぐことを目指すBlack Samurai Coffeeにとって、そのような企業と仕事ができる可能性は、商業的な重要性だけでなく、大きな責任も伴うものでした。

最初の面談では、私たちが何者なのか、何を大切にしているのか、そしてコーヒー業界にどのような貢献をしていきたいのかをお伝えすることができました。

しかし、それだけでは十分ではありませんでした。

時間と行動を通じて、私たちが信頼して仕事を任せられるビジネスパートナーになれることを、まだ示せていなかったからです。

そのためには、忍耐強く関係を築き、継続的に関わり合い、互いから学び続ける姿勢が必要でした。

書面を超えてつながる握手

最初の面談で特に印象に残ったのは、その握手を写真に残したことでした。

カミールにとって、その握手は、将来契約書に記されることになる署名だけではなく、信頼に基づいて築かれる約束を象徴するものでした。

吉谷様から伺ったある言葉が、私たちの心に残っています。日本のビジネスにおいては、契約の背後にある一人ひとりの責任が、契約書そのものと同じくらい重要である、という考え方です。

握手は、契約に代わるものではありません。

それは、双方が契約を誠実に履行し、責任を持って向き合おうとする意思を表すものです。

この考え方は、Black Samurai Coffeeが大切にしている価値観とも強く重なりました。

コーヒーは、お客様のもとに届くまでに、農家、生産者組織、精製事業者、輸出事業者、物流事業者、輸入事業者、ロースター、そしてカフェなど、多くの人々の手を通ります。

このサプライチェーンにおいて契約は不可欠ですが、契約だけで丁寧な仕事、透明性、そして相互の尊重が保証されるわけではありません。

それらを生み出すのは、人です。

その握手が、将来の契約に代わったわけではありません。その契約に意味を与えるものとなったのです。

面談と面談の間に積み重ねたこと

その後の期間は、一度の決定的な交渉によって形づくられたものではありませんでした。

継続的な関わり合いの積み重ねによって築かれていきました。

私たちは連絡を取り続け、情報を率直に共有し、商品や期待すること、そして協力できる可能性について話し合いました。また、いただいたご意見に耳を傾けながら、エチオピア産コーヒーの供給体制を整え、私たちの目指すことだけでなく、まだ改善すべき課題についても、できる限り透明性を持ってお伝えしてきました。

すべての会話が、すぐに具体的な次のステップにつながったわけではありません。

それもまた、関係を築いていくプロセスの一部でした。

ビジネスパートナーシップは、契約の締結や商品の納品といった、目に見える成果によって語られることが多くあります。

しかし、その成果を可能にするためには、目に見えない積み重ねがあります。

  • 一貫して誠実に対応すること
  • 情報を正直に共有すること
  • 相手が抱える懸念を理解すること
  • 相手の社内における意思決定やタイミングを尊重すること
  • 相手からのコミットメントを求める前に、まず自らの信頼性を示すこと
  • 取引がまだ確定していない段階でも、対話を続けること

この期間を通じて、双方が、この関係に実際のビジネスを支えるだけの確かな基盤があるのかを見極めることができました。

同時に、Black Samurai Coffeeにとっても、西村珈琲がサプライヤーに何を求めているのかを、より深く理解する機会となりました。それは、魅力的な産地のストーリーだけではありません。品質、安定性、プロフェッショナルな調整・対応、そして説明責任が求められていました。

初めての供給:2023年6月

2023年6月、最初の面談から約20か月を経て、Black Samurai Coffeeは西村珈琲への初めてのエチオピア産コーヒーの供給を開始しました。

この取引は重要な節目となりましたが、関係そのものの始まりではありませんでした。

それは、それまでコミュニケーション、信頼、そして相互理解を通じて育まれてきた関係が、具体的な商取引という形で実を結んだ瞬間でした。

Black Samurai Coffeeにとって、この最初の供給には特別な意味がありました。

私たちは単に、お客様にエチオピア産の生豆を届けたのではありません。神戸で何世代にもわたりコーヒーを提供してきた企業のサプライチェーンの一員として、その責任を託されたのです。

その信頼に応えるためには、確実な実行が必要でした。

  • 必要とされるコーヒーとその用途を理解すること
  • エチオピアのパートナーと連携して供給を調整すること
  • 品質や産地に関する情報を明確に伝えること
  • 輸入および納品を適切に管理すること
  • フィードバックに対応すること
  • 一度きりの取引で終わらず、継続的な関係につなげていくこと

したがって、最初の供給は、一つの成果であると同時に、新たな責任の始まりでもありました。

それは、粘り強く取り組むことで機会を生み出せることを示すものでした。ただし、その粘り強さが意味を持つのは、信頼性を伴ってこそなのです。

最初の供給後も、定期的な訪問や対話、そして今後の可能性についての意見交換を通じて、この関係は続いていきました。

SCAJで続いた対話

この関係は、日本のより広いコーヒー業界との交流を通じても発展していきました。

Black Samurai Coffeeからの招待を受け、2023年10月には、吉谷様が奥様とともに、SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)の展示会に出展していた私たちのブースを訪れてくださいました。その後も、2024年のSCAJをはじめ、コーヒー業界に関連するさまざまな活動を通じて、再びお会いする機会がありました。

こうした機会によって、私たちは、異なる環境の中でも対話を続けることができました。そこには、日本国内外から集まったロースター、輸入事業者、生産者、コーヒー関連機器メーカー、そしてさまざまなコーヒー業界関係者が集まっていました。

SCAJは、私たちの取り組みの進展を共有し、エチオピア産コーヒーをご紹介するとともに、Black Samurai Coffeeが掲げるより大きな使命についてお伝えする機会となりました。

そして何より重要だったのは、こうした訪問を通じて、私たちの関係が一度きりの正式な商談を超えて、さらに発展していたことです。

それは、繰り返し顔を合わせること、業界での経験を共有すること、そしてそれぞれの組織、さらにはその背後にいる一人ひとりが何をもたらすことができるのかを理解しようとする真摯な姿勢によって、少しずつ育まれていきました。

2023年10月、SCAJのBlack Samurai Coffeeブースを訪れた吉谷様と奥様――継続的な対話と人と人とのつながりによって深まっていった関係。

単なる「買い手と供給者」の関係を超えて

西村珈琲を単に顧客、Black Samurai Coffeeを供給者と表現することもできます。

商業的には正しい表現ですが、それだけではこの関係のすべてを表しているとは言えません。

この関係は、私たちにとって、助言、学び、そして励ましを得る機会でもありました。

Black Samurai Coffeeがまだ発展の初期段階にあり、先行きが不確かな時期から、吉谷様には私たちを支えていただきました。アドバイスをいただき、継続的に関わってくださり、ご経験を共有していただいたことは、必ずしも前進が約束されていなかった時期の私たちにとって、大きな励みとなりました。

私たちは、そのようなご支援を決して当たり前のものとは考えていません。

確立された企業には、日々さまざまな提案や営業の申し入れが寄せられます。その中で、時間を割いて話を聞いていただき、関心を持っていただき、そして信頼していただくためには、自らその信頼を築いていかなければなりません。

だからこそ、私たちの感謝は、コーヒーを購入していただいたことだけに向けられるものではありません。

Black Samurai Coffeeがまだ実績を築いている途中の段階で、耳を傾けてくださったこと。

率直なフィードバックをくださったこと。

新たな関係を試していくために、時間と忍耐を持って向き合ってくださったこと。

そして、ビジネスとしてだけでなく、人と人とのつながりを通じても、このパートナーシップを育て続けてくださったこと。

その一つひとつに、心から感謝しています。

神戸に根差した関係

このパートナーシップが特別な意味を持つのは、神戸に根差している関係だからでもあります。

西村珈琲の歴史は、神戸という街と深く結びついています。その店舗は、地域の人々や訪れる人々にとって親しまれる場所となっており、神戸ならではのコーヒー文化、ホスピタリティ、そして国際的な交流を映し出しています。

Black Samurai Coffeeもまた、神戸でそのアイデンティティの重要な部分を築いてきました。

港町としての歴史、国際的な視野、コーヒー文化、そして海外から来る人々や新しい考えを受け入れてきた神戸の開かれた姿勢は、日本とアフリカのコーヒー生産地をつなぐ拠点として、自然な親和性を持っています。

したがって、このパートナーシップがつないでいるのは、単なる2社だけではありません。

それは、次のような人々や存在をつないでいます。

  • エチオピアのコーヒー生産者と供給パートナー
  • 神戸で築かれた日本とアフリカをつなぐビジネス
  • 神戸の歴史あるコーヒー企業
  • エチオピア産コーヒーを実際に味わう地域のお客様
  • 長期的な関係を通じて価値を生み出そうとする組織

この意味において、この関係は、海外の産地と日本の職人技をつなぐ架け橋として、神戸が果たすことのできる役割を象徴するものでもあります。

信頼は、常に積み重ね続けるもの

信頼は、一度築けばそれで完成するもののように語られることがあります。

しかし実際には、一つひとつのやり取りを通じて、常に新たに積み重ねていくものです。

これまで良い対話を重ねてきたからといって、不十分な納品が許されるわけではありません。意義のある理念があるからといって、コーヒーの品質に代わるものでもありません。強固な関係があるからといって、明確な取引条件やプロフェッショナルな業務遂行が不要になるわけでもありません。

信頼が、共に仕事をする機会を生みます。

そして、その仕事を継続できるかどうかを決めるのは、実際の成果と仕事への姿勢です。

Black Samurai Coffeeは、西村珈琲から寄せていただいている信頼に伴う責任を、深く認識しています。

私たちは、今後も次の点を継続的に改善していかなければなりません。

  • 供給するコーヒーの品質と安定性
  • コミュニケーションの明確さ
  • 産地や商品の情報提供
  • 物流・納品の信頼性
  • 問題が生じた際の対応
  • 日本のお客様とアフリカのパートナー双方に生み出す価値

信頼に応えるということは、それを永続的なもの、あるいは当然に得られるものとして扱わないことです。

それは、これからも信頼していただくに値する行動を続けることなのです。

これからも大切にしていく関係

2026年5月、カミールは再び西村珈琲を訪問し、吉谷様とお会いしました。

その訪問は、これまでの関係がどれほどの道のりを歩んできたのかを改めて振り返る機会となりました。

適切なご紹介先さえまだ分からない中で店舗を訪ね続けたことから、

2021年10月の最初の面談へ。

すぐに取引には至らなかったものの、交わした一度の握手へ。

2023年6月の初めてのコーヒー供給へ。

SCAJでの継続的な交流へ。

そして、現在も続いているパートナーシップへ。

関係は、積極的に育て続けることでこそ続いていくものです。

そこには、感謝、関心、そして共に価値を生み出し続けようとする姿勢が必要です。

この歩みから学んだこと

西村珈琲との関係は、現在のBlack Samurai Coffeeの考え方を形づくる、いくつかの大切な学びを改めて教えてくれました。

粘り強さには、相手への配慮が必要

繰り返し努力することで機会を生み出すことはできます。しかし、それは相手の時間、優先事項、意思決定を尊重する姿勢があってこそです。

最初の面談だけでは、ビジネスモデルにはならない

最初の出会いは重要です。しかし、本当の仕事はその後に始まります。自分たちが相手にとって意味のある存在であること、信頼できる存在であること、そして価値を生み出せることを、行動を通じて示していく必要があります。

透明性が信頼を育てる

信頼は、機会についてだけでなく、制約、リスク、改善すべき点についても、双方が率直にコミュニケーションを取ることで育っていきます。

品質が関係を継続させる

理念が人と人をつなぐきっかけになることはあります。しかし、最終的にはコーヒーそのものが期待に応えなければなりません。長期的なパートナーシップには、商業的な期待に応えられる商品と確実な実行が必要です。

感謝は、行動で示すべきもの

パートナーへの最も意味のある感謝の伝え方は、言葉だけではありません。継続的に改善し、責任を持って仕事を遂行し、いただいた信頼を「より良い仕事をする責任」として受け止めることです。

これからに向けて

Black Samurai Coffeeは、吉谷様をはじめ、西村珈琲の皆様から寄せていただいた信頼、ご指導、そしてご協力に、心より感謝しています。

私たちは、最初のコーヒー供給を、この関係の終着点とは考えていません。
それは、より長い旅の中にある一つの章にすぎません。

これからも、エチオピアをはじめとするアフリカのコーヒー産地が、日本のコーヒーコミュニティの品質、多様性、そして文化的な豊かさにどのように貢献できるのかを、さらに探求していきたいと考えています。

また、一杯のコーヒーに関わる人々のつながりも、さらに深めていきたいと考えています。生産者、協同組合の関係者、ロースター、事業者、そしてお客様。地理的には離れていても、コーヒーを通じてつながることのできる人々です。

私たちの使命は、これからもアフリカのコーヒー生産地と日本をつなぐ架け橋を築いていくことです。

西村珈琲との関係は、その架け橋が何によって築かれるべきなのかを、私たちに教えてくれました。

それは、コーヒーだけでもなく、

契約だけでもありません。

忍耐、誠実さ、職人の技、そして信頼です。